「未来のない未来」へ向かう私たちはいま

「これからの時代をつくる仲間たちへ」「バカとは付き合うな」

先日来、書店の平積みにこのような題の自己啓発本、経済書を多く見る。
皆さんはどのような印象を受けるだろうか。

現代社会はスピード化に立脚している。交通も取引も情報も、全てが技術のおかげで速くなった。そして、それは流行の波のスピード化をもたらしている。SNSはその最たるものだ。流行のファッション、グルメ、エンターテイメントなど、気づけばもう廃れている。

これほど流動的になった今の社会、私たちの抱える不安は未曾有のものと言えるだろう。以前のように地域社会での互助・共助があるわけでもない。孤独の中を耐えていかなければならないのだ。そのような時代になったからこそ「これからの時代をつくる仲間たちへ」とか「バカとは付き合うな」といったメッセージが響きを与えるようになったのだろう。

けれども、どこかそのメッセージの利己的な部分に違和感を覚えないだろうか。他を排除し自分の生存のみを確保することだけに躍起になるのを心の底から正しいと信じることができるのだろうか。「弱肉強食」は動物界の掟である。人間と動物の遺伝子には1パーセントしか変わらないこともあるようだが、その1パーセントが人間の人間たる所以なのだ。1パーセントを喪失し、「弱肉強食」に堕してしまえば、私たちはただの知性を持った動物に過ぎない。

未来のない未来に向かう今、私たちは競争ではなく団結して、その見えざる壁に挑まねばならないのではないだろうか。壁は時間的なものであり空間的なものでもある。

プロフィール

荻原重信

宮城県出身。
政治コラムニストとしてTHEMEDIAに寄稿。
最近ツイッターを始めた。
趣味は剣道。好きな食べ物はササニシキ。