コロナ禍におけるリーダーの有様 首相公選制はいかに

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 緊急時にはリーダーの資質が問われるようになる。昨今の事態で日本国民もそれにようやく気付いてきたか。安倍首相への批判が高まっている。感染症の流行という中で財政支援を行わない,都合のいい人事を優先させるなどという体たらくだ。そんな状況に対して,首相の直接公選制を唱える声がある。今回は現在の日本において首相の直接公選制が妥当なシステムかどうかを検討する。

 直接公選制により執政者を選ぶ制度は,広く大統領制として定着している。大統領制といえば,アメリカだ。世界各国大統領制を採用する国はあるが,大統領制はアメリカに始まる。フランスやロシアにおいては大統領のもとに首相をおく。ドイツは,大統領は議会において選出されるが国家元首としての職務のみが与えられ,政務は首相が指導する形をとる。これに対し,アメリカの政治は大統領中心に運営されているように見えるが,実は大きな制約が課されている。法案提出権と予算編成権がなく,また議長の招待がなければ議会に入ることもできない。

 合衆国憲法上,大統領は議会を抑制する存在であり,政治の主導権は議会の方にある。合衆国議会議員は公設秘書を20人程雇うことができ,日本の国会議員が3人であるのに対し大幅に多いことからも議会が重視されていることがわかるだろう。合衆国憲法が想定するのは,大統領 の中立的姿勢であり,党派的色彩を帯びるのは好ましくない。実際,現在のように大統領が国政に対して指導的地位を確立するのはフランクリンルーズベルト大統領以後のことである。

 憲法上このような制約を受けているため,大統領には絶対的権限がない。大衆扇動だけではアメリカの政治は動かせず,議会の同意を必要とする。つまり,政策は,政治エリートの目に晒されてもなお耐えうるものでなければ実行されないのである。トランプ大統領が未だ国境の壁を建設できていないのはそのためである。

 翻って日本の政治状態を観察しよう。首相の直接公選制を求める声は,安倍首相に対する批判と実力のある首相を求めるものであった。この声が期待するのはアメリカのような議会追従型の大統領ではなく,現行の議院内閣制と同じ主導的立場に首相を置くシステムだろう。

 しかし,アメリカに見られるポピュリズムの風潮は日本においても同様である。維新の会はその最たるもので,首相を直接公選制にすれば間違いなくその強みを発揮するだろう。それにより,長期的視点を欠いた政策が実現し,日本の政治は崩壊しかねない。首相の強い権限を残したまま直接公選制とするのは,付和雷同する日本国民には高い危険性がある。また,仮に議会の権限を強め,アメリカ大統領制型にしたとしよう。それでも,残念ながら現在の国会議員は金と名声に癒着した議員ばかりであり,政策立案に有能な議員を見出すのは難しい。

 そもそも,問題は選挙制度にあるのか。選挙制度をいくら変えようとも,リーダーを選ぶ民意自体は変わらない。現代日本に蔓延する「寄らば大樹の陰的精神」が,自民党以外に票を入れることを妨げ,腐敗しきった今の自民党,そして安倍政権を作ってきた。

 実力のある政権を選べるようにするには,選挙制度を変えたところで意味はない。国民の意識と知識が育たなければいけない。

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オーサー

荻原重信

荻原重信

宮城県出身。
THE-MEDIA.jpの設立以来、政治コラムニストとして寄稿を続ける。
最近ツイッターを始めた。
趣味は剣道。好きな食べ物はササニシキ。

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